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ユーザ事例詳細

組換えCRISPRリボヌクレオ蛋白質を利用した in vitro enChIP法の開発 (2016年6月)【大阪大学】 微生物病研究所 感染症学免疫学融合プログラム推進室 ゲノム生化学研究グループ
       藤田敏次 助教 / 藤井穂高 准教授
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【お客様からのコメント】組換えCRISPRリボヌクレオ蛋白質を利用した in vitro enChIP法の開発を目指し、DNA切断活性の無い
変異型Cas9(dCas9)の発現・精製をProCubeサービスでお願いしました。160 kDaという高分子量にもかかわらず、高純度な精製蛋白質を準備していただき、本方法論を開発することができました。
【本文】
ゲノム機能の分子機構の解明には、細胞内において解析対象とするゲノム領域に結合している分子を網羅的に同定することが理想的です。我々の研究室では、細胞から解析対象とするゲノム領域を遺伝子座特異的に単離し、当該ゲノム領域に結合している分子を網羅的に同定する方法として、遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法(iChIP法およびenChIP法)を開発してきました。enChIP法は、ゲノム編集などで注目されているCRISPRなどの人工DNA結合分子を解析対象とするゲノム領域に結合させた後、当該分子をアフィニティー精製することで、解析対象ゲノム領域を単離する技術になります。質量分析法などと組み合わせることで、単離したゲノム領域に結合している分子を網羅的に同定することができます。今回、細胞内での人工DNA結合分子の発現を必要としない in vitro enChIP法の開発を進めました(図1)。

まず、ProCubeサービスを利用することで、dCas9(N末3xFLAG-tag、C末Dock-tag付)を精製蛋白質として用意し(r3xFLAG-dCas9-D、図2)、化学合成したgRNAと共にCRISPRリボヌクレオ蛋白質を形成させました(図1)。次に、精製したゲノムDNAに対して、標的とするIRF-1遺伝子座が単離できるかどうか評価したところ、当該ゲノム領域が高効率で単離できることが判明しました(図3A, B)。

さらに、細胞から調製したクロマチンを用いて同様の操作を行った場合でも、当該ゲノム領域を特異的に単離できることが判明しました(図3C)。

以上の結果から in vitro enChIP法は、特定DNAの精製や、解析対象ゲノム領域上に結合している分子の同定に利用できる可能性が考えられます。また、本技術によって、ゲノム機能解析がより迅速に進むことが期待されます。

本事例で掲載している図表は藤田助教よりご提供いただきました。

[ 参考文献 ]
・Hoshino and Fujii (2009) J Biosci Bioeng, 108(5):446-449
・Fujita et al., (2013) Sci Rep, 3:3171
・Fujita and Fujii (2013) Biochem Biophys Res Commun, 439(1):132-136
・Fujita et al., (2016) Genes Cells, 21:370-377

DPP-4と2型糖尿病治療薬アナグリプチンの複合体結晶構造解析 (2016年3月)【株式会社三和化学研究所】 三重研究パーク 製剤研究所原薬グループ長 岡みつる
              医薬開発センター臨床開発部データサイエンスグループ 渡辺幸久
【株式会社創晶】      代表取締役社長 安達宏昭
              結晶化チームリーダー 岡田詩乃
              結晶化チーム 研究員 元山朋子
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【お客様からのコメント】ジペプチジルペプチターゼ-4(DPP-4)を阻害し、糖尿病による症状を抑える治療薬「アナグリプチン」(製品名:スイニー®錠100 mg)の結合様式を知るため、複合体結晶を作製してX線構造解析により解明したいと考えました。そこでProCubeサービスを利用してHuman DPP-4を発現・精製したところ、結晶化に必要なサンプルを大量、かつ高品質に生産できました。
【本文】
ProCubeのカイコ発現系を利用して、結晶化グレードのDPP-4を合計10 mg(濃度10 mg/ml)、取得することに成功しました。SDS-PAGE上の純度は99%以上で(図1)、動的光散乱測定では単分散性を示し、結晶化実験で使用するタンパク質サンプルとしては、十分な品質であると判断しました。 結晶化実験では、まずDPP-4とアナグリプチン(リガンド)の共結晶化溶液を作製し、シッティングドロップ蒸気拡散法にて結晶化スクリーニングを実施しました。その際、溶液中にフェムト秒レーザー照射を集光照射して、強制的な核発生を試みました。その結果、いくつかの結晶化条件が見つかりました。その後、レーザー照射や溶液撹拌技術などを用いて最適化検討を行ったところ、良質な結晶を得ることができました(図2)。 この結晶を凍結させ、100Kの低温環境下でX線を照射したところ、良好な回折像が得られました。構造解析用のフルデータを収集したところ、2.85Å分解能での構造解析につながり、DPP-4とアナグリプチンの複合体構造を明らかにすることができました(図3)。

本事例で掲載している図表は安達様よりご提供いただいております。

[ 参考文献 ]
・Y. S. Watanabe et al, Enzyme Inhib. Med. Chem. 30 (2015) 981-988

精製DNA 結合蛋白質を利用した遺伝子座特異的ChIP 法の開発 (2015年1月)【大阪大学】 微生物病研究所 感染症学免疫学融合プログラム推進室 ゲノム生化学研究グループ
       藤井 穂高 准教授 / 藤田 敏次 助教
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【お客様からのコメント】精製DNA結合蛋白質を利用した遺伝子座特異的ChIP法の開発を目指し、3xFLAGタグ付きLexA蛋白質の大腸菌での発現・精製を試みましたが、発現がみられませんでした。そこでProCubeのカイコ発現系を利用したところ、発現・精製ともに良好な結果が得られ、本方法論を開発することができました。
【本文】
ゲノム機能の分子機構の解明には、細胞内において解析対象とするゲノム領域に結合している分子を網羅的に同定することが理想的です。大阪大学微生物病研究所・藤井准教授の研究室では、細胞から解析対象とするゲノム領域を遺伝子座特異的に単離し、当該ゲノム領域に結合している分子を網羅的に同定する方法として、遺伝子座特異的ChIP法(iChIP法・enChIP法)を開発しました。
iChIP法は、解析対象とするゲノム領域に細菌LexA蛋白質が結合する塩基配列を挿入し、3xFLAGタグ付きLexA蛋白質(3xFNLDD)を発現させた後、免疫沈降を行うことで、解析対象ゲノム領域を単離・解析する方法です。今回、細胞内での3xFNLDDの発現を必要としないiChIP法を開発しました(図1)。
まず、ProCubeを利用してDockタグ付き3xFNLDD(r3xFNLDD-D)を精製蛋白質として用意しました(図2A)。次に、Pax5遺伝子プロモーター領域にLexA結合塩基配列を挿入したニワトリDT40細胞からクロマチンを調製し、r3xFNLDD-Dを利用したアフィニティー精製を行うことで、Pax5遺伝子プロモーター領域を高効率で単離することに成功しました(図2B)。転写途中のPax5 mRNAも一緒に単離・検出できたことから、ゲノム上に存在する分子の結合を維持したまま、解析対象ゲノム領域を単離・解析できることも判明しました(図3)。
今後、本方法論によって、ゲノム機能解析がより迅速に進むことが期待されます。

本事例で掲載している図表は藤田助教よりご提供いただいております。

[ 参考文献 ]
・Hoshino and Fujii (2009) J Biosci Bioeng, 108(5):446-9
・Fujita et al., (2013) Sci Rep, 3:3171
・Fujita and Fujii (2013) Biochem Biophys Res Commun, 439(1):132-6
・Fujita and Fujii (2014) BMC Mol Biol, 15(1):26

新規放射線防護剤候補によるp53転写依存およびp53転写非依存経路を介したアポトーシス誘導阻害 (2014年9月)【東京理科大学】 薬学部 生物有機化学研究室 青木伸 教授【徳島大学大学院】ヘルスバイオサイエンス(HBS)研究部 森田明典 准教授
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【お客様からのコメント】市販の精製品のp53タンパク質を用いてEMSAを行ったところDNA結合能が確認できませんでした。
そこでProCubeによってカイコで発現させたp53を使用したところ、良好なDNA結合能が認められ、
放射線防護剤の反応機構解析に有用なデータを得ることができました。
【本文】
放射線がん治療はがん治療の有用な手法ですが、放射線照射によりがん周囲やその他の正常細胞の過剰な細胞死を引き起こすことで有害な副作用を生じる可能性があります。この副作用を予防するために、東京理科大学薬学部青木教授の研究室では、放射線照射による細胞死を抑制する新たな放射線防護剤の開発に取り組まれております。
今回青木教授の研究室では、放射線照射によるアポトーシス阻害活性を有する放射線防護剤候補の化合物(Bispicen, 8HQ* 誘導体A, B)について、アポトーシスの誘導に関わるp53タンパク質(ProCubeサービスを利用して発現・精製)との関連性を調べました。
この結果、Bispicenはp53タンパク質の二次構造変化をもたらしDNA結合能を阻害する一方、8HQ誘導体はp53の二次構造変化ならびにDNA結合能に影響しませんでした。これにより、Bispicenと8HQ誘導体は、p53転写依存およびp53転写非依存経路を介してアポトーシス誘導を阻害していることが明らかになりました**。
*8HQ: 8-hydroxyquinoline
**Bispicenはp53転写非依存型のアポトーシスにも関与することが明らかになっています。

本事例で掲載している図表は、青木教授よりご提供いただきました。

[ 参考文献 ]
・Morita et al., (2013). Evaluation of zinc (II) chelators for inhibiting p53-mediated apoptosis.
 Oncotarget. 4(12):2439-50
・Ariyasu et al., (2014). Design and synthesis of 8-hydroxyquinoline-based radioprotective agents.
 Bioorg Med Chem. 22(15):3891-905
・Morita et al., (2014). AS-2, a novel inhibitor of p53-dependent apoptosis, prevents apoptotic mitochondrial
 dysfunction in a transcription-independent manner and protects mice from a lethal dose of ionizing radiation.
 Biochem Biophys Res Commun. 450(4):1498-504